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【日本自動車会館開設1周年記念シンポジウムを開催】
 

『近未来のくるま社会を展望する』
健全なくるま社会の実現に向け「持続可能なモビリティ」を考察
予定を大幅に上回る200人が参加

 日本自動車会館(東京・港区芝大門)の入館団体・企業(15法人)は、4月6日、同会館内1階の「くるまプラザ」会議室で、会館開設1周年記念シンポジウム「近未来のくるま社会を展望する」を開催した。会館入館団体の代表者で構成する「日本自動車会館運営協議会」(代表=豊田章一郎日本自動車会議所会長)が主催、会館入館団体・企業および会館外の関連団体・企業関係者などを対象に、学識経験者による基調講演、鼎談などを通じて「健全なくるま社会のあり方」を提起した。参加は当初予定の120人を大幅に上回る約200人にのぼり、会場外の「くるまプラザ」インフォメーションコーナーでも音声と映像を流し、対応した。


 「健全なくるま社会の構築」は、自動車関係団体・企業に共通する理念であり、会館開設趣旨の基本指針にも掲げていることから、開設1周年に当たって入館団体・企業が共同で取り組む記念事業のテーマとして選定。社会的要請事項である環境、安全問題への対応を含むモビリティの持続可能な発展について考えることとした。
 シンポジウムは、最初に豊田章一郎・日本自動車会館運営協議会代表(日本自動車会議所会長)が挨拶、「基調講演」では「Mobility2030:持続可能な社会を目指すモビリティの挑戦」(WBCSD=持続可能な発展のための世界経済人会議=報告書)と題してWBCSDワーキンググループ委員でもある本田技術研究所主任研究員の椎名孝則氏、「持続可能な交通のあり方」(研究者の立場から)と題して上智大学大学院教授(名古屋大学客員教授)の柳下正治氏が「持続可能な交通のあり方」と題してそれぞれ講演。
 引き続いて第2部の「鼎談」では、柳下氏をコーディネーターに、渡邉浩之トヨタ自動車専務取締役、ジャーナリストの清水和夫氏が、基調講演を踏まえて「近未来のくるま社会を展望する」をテーマに語った。
 なお、同シンポジウムの開催に先立って、同日正午から会館1階ロビーで弦楽四重奏記念コンサートを行った。


(記念コンサート)

(会場外でも音声と映像で対応)



<シンポジウムの概要>

〔開会挨拶〕  日本自動車会館運営協議会代表 豊田章一郎氏

 本日は、お忙しいところ、日本自動車会館開設1周年記念シンポジウムに、多数ご参集いただきまして、まことにありがとうございます。シンポジウムの開会にあたりまして、ひとことご挨拶申しあげます。
 昨年3月、皆様方のご尽力・ご協力をいただき、待望の日本自動車会館がここにオープンいたしました。
 私はかねがね、鉄鋼には鉄鋼会館、銀行には銀行会館、自転車には自転車会館、生糸には蚕糸会館というように、各産業には関係者が集まって、情報交換・発信のできる会館があるのに対しまして、自動車に会館がないことに疑問を持つと
同時に是非欲しいと考えておりました。製造、販売、整備、運輸、ユーザーサービスなど自動車関連の各分野の連携を強化し、更なる効率化を図るということはもちろんですが、同時に、私としては、世界に冠たる日本の自動車産業の象徴が欲しいとも思っていた訳です。
 そういう気持ちもありまして、この会館に隣接して自動車博物館が欲しい、またその博物館を見にこられる方のためにホテルもあったほうがいいなど、ずいぶん欲張ったプランも含めて、長年にわたって、場所や方法、投資額などを検討してまいりました。
 この夢が、「日本自動車会館」という形で100%ではありませんが、ようやく実を結んだものであります。
 早いものでそれから1年が経過しました。本日ご参集の皆様はここに入居されている方や、よく会館を訪問される方がほとんどだと思います。実際の使い勝手やご要望などについて、ざっくばらんなご意見・ご感想を伺えればと存じます。それと同時に、是非この会館を皆様の手で、より良い施設にしていって欲しいと切に願っている次第であります。
 さて、去る3月25日に、21世紀最初の万国博覧会であります「愛・地球博」が開幕しました。すでにご来場いただいた方もおられると思いますが、この博覧会では各パビリオンが「自然の叡智」をテーマとして、地球や環境との共生を謳っております。大変興味深い展示ばかりで、「これから地球はどうなるのだろうか」とか「人類はどこへ向かうのだろうか」といった根源的なテーマについて、思いをめぐらせるいい機会になりました。
 本日のシンポジウムのテーマは「近未来のくるま社会を展望する」ですが、これからもクルマが社会の一構成員として、地球や人類と共存していくための方策を探ろうというものであります。2030年をターゲットとして、持続可能なくるま社会のあり方、交通のあり方を皆様方とご一緒に考えて行きたいと思います。
 講師の先生方には、大変お忙しいところ私どものためにお時間をいただきまして、まことにありがとうございます。また、本日は、自動車関連の団体・企業は言うにおよばず、近隣の会社や町内会などにも呼びかけて、幅広い分野の方々にご参加を頂いております。
 本日のシンポジウムを通じまして、お一人お一人が日頃持っておられる課題や感じておられる疑問に対して、解決の糸口をつかんでいただければ幸いです。そしてさらに関心を持たれた方は、是非、「愛・地球博」にお運びいただければと存じます。
 最後になりますが、日本自動車会館を名実ともに、世界に誇れるビルにしていくために、今後とも、皆様からのご支援・ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げ、簡単ではございますが、私の挨拶とさせていただきます。


[ 基調講演 1 ]

「Mobility2030:持続可能な社会を目指すモビリティの挑戦」
講師=WBCSD・WG委員、本田技術研究所主任研究員 椎名孝則氏


 WBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)では、2030年のモビリティビジョンを作るため10の分科会を作り、12の指標を設定した上でモビリティ持続の可能性について検討してきた。
 その中で、・輸送関連の従来型排出物を世界のいかなる場所でも公共の健康への深刻な懸念にならないレベルまで削減、・輸送関連の温室効果ガス排出量を持続可能なレベルまで抑制、・衝突事故における世界の死亡・重傷者数を大幅に削減、・輸送関連の騒音の削減、・交通渋滞の緩和、・最貧国およびほとんどの国における経済的、社会的に恵まれない人々が、よりよい暮らしを送ることを阻むモビリティ格差の縮小、・一般の人々が利用できるモビリティ機会を保護し高める――という7つを考え、それが達成できればモビリティは持続可能になると考えた。

この7つの目標達成のための可能性を求める上での基本要素は、「自動車技術」と「燃料」ということになる。
 燃料は、今後もガソリンと軽油が主流であり続けると考えられが、FTガソリンやFTディーゼル、DME、バイオなどの合成燃料も増えてくると考えている。しかし、一番注目したいのは水素であり、実現には時間がかかると思われるが、今後、開発投資を拡大していかなければならないというのが「持続可能なモビリティ・プロジェクト」(SMP)の最終報告書の結論になっている。
 使用燃料の推進システムでは、今後も内燃機関が主役を演じ続けるだろうが、エネルギー効率は改善されると考えている。ハイブリッドはCO2排出量がゼロにはならないものの、排出量削減効果は高く、開発力を高める必要があると結論付けた。

 温室効果ガスの排出量に及ぼす影響を燃料と自動車技術を組み合わせて分析する手法が、「油井から車輪まで(WTW)」。これは、燃料掘削から車が動いたときまでに排出するCO2の排出量を評価するもので、その中身は「油井からガソリンスタンドのタンクまで(WTT)」と「タンクから車輪まで(TTW)」に分けられる。
 推進システムと各燃料の組み合わせを、WTW のCO2排出量で比較すると、特徴的なのはガソリン車をガソリンで動かすなど内燃機関の場合はTTWが大きくなってしまう。また、燃料電池もしくは水素の場合は、TTWはゼロでも燃料(水素)を作るところに課題があって、WTTが増えるということになる。このように、燃料と推進システムの組み合わせを考えながら燃料と自動車の技術を考えなくてはならないということである。
 このように、これまで単独であった技術を組み合わせ、2050年のCO2排出量を2000年レベルにするためにはどのような技術が必要なのかを考えたが、結論としては、ディーゼル化、ハイブリッド化、バイオ燃料の使用、燃料電池車などの技術を投入すべきということ。つまり、燃料と自動車の双方で取り組まないと、持続可能なモビリティ、あるいはCO2の削減はできないということである。
 7つの目標の実現に向けて努力することが必要だが、そのためには一企業、業界、国が単独で解決できる問題ではない。社会のあらゆる階層の協力と努力が必要であるということを報告のまとめとした。


[ 基調講演 2 ]

「持続可能な交通のあり方」
講師=上智大学大学院教授(名古屋大学客員教授) 柳下正治氏


 環境配慮型の持続可能な交通を意味する「EST」(Environmentally Sustainable Transport)という言葉を知っていただきたい。「環境資源制約などの主課題に的確に対応でき、かつ、移動したいという欲求を満たし続けていくことができるような交通」のことで、これまでの20世紀からのシステムでは持続不可能ではないかということから問題提起された。OECDで議論が巻き起こり、2001年にガイドラインが示され、長期的な観点から各国、特に先進国ごとにそれを達成するためのビジョンを立案し、さらに多くのステークホルダーによるディスカッションを通じて政策立案することが提唱されている。
 そのリポートでは、「20世紀型の交通は持続可能型ではなく、これを持続可能型にするには革新的な技術開発が必要。それだけではなく交通の質の改善、都市や世界の構造を改革しなければならない。さらに人の行動そのものも見直しが必要」と述べている。
 ステークホルダー会議で徹底的に議論し、情報を共有した上で論点を整理して考え方が一致する点、異なる点を見極めていく場が必要ではないかといわれ始めた。
 最近、日本でも初めて2年間にわたってESTを目指したステークホルダー会議が開催された。私もその一人として関係してきたが、約30人のメンバーは国の機関、自治体。企業からはメーカー、運輸・鉄道会社、流通関係会社のほか環境NGO、自動車関係団体、消費者団体などから参加していただき、ESTを実現するための施策は同あるべきかを議論した。
 そこでは、自動車メーカーをはじめ厳しい意見を持っているNGOまで幅広い分野の関係者がひざを交えて議論したということから「何らかの意思決定は可能ではないか」という感想を持った。また、持続可能な交通の実現は、技術と交通行動の変化の均衡ある組み合わせがポイントだが、技術への期待が非常に大きい中で特にメーカーに対する期待は大きい。ただ、それを受け入れる社会システムの役割はもっと重要だと感じた。わが国では、公共交通充実に向けた政策がある面で遅れているのではないかという指摘があったが、これは、思い切った政策措置に対する期待が強いためではないか。
 また、都市や土地利用のあり方、土地利用政策といった根源にまでさかのぼった政策の必要性は認めながらも、その困難性認識は共通していたようだ。これについてはまだ議論が足りないと思っている。
 一方、個々の問題になると、いろいろなセクター(テーマ分野)間の微妙な意見や価値観の相違がある。このため、なぜ相違があるかということを発見することが、最終的な社会的合意や日本の政策転換のきっかけになるのではないかと考えている。
 このようなことからして、こうしたステークホルダー・ダイアログといった方法論を、さまざまな価値観が存在する問題について適用するということが解決策を導き出すきっかけのひとつとなるということを問題提起としたい。


[ 鼎談 ]

「近未来のくるま社会を展望する」

コーディネーター
  柳下正治氏
トヨタ自動車(株)専務取締役
  渡邉浩之氏
ジャーナリスト
  清水和夫氏

柳下氏  本日のシンポジウムのテーマは、「近未来のくるま社会を展望する」ということなので、最初に、目指すべき車社会とはどういうものなのか、その実現のためには何が問題なのかということについて持論をお聞かせいただきたい。


渡邉氏 端的に言うと、ひとつは「豊かになる」こと。ふたつ目は「人材育成」と考えている。先進国の例でも分かるように、豊かになれば人の移動距離は増えてくる。つまり、世界のすべての民族が豊かになるには移動距離を増やさなければならないということだと思う。人の一生の間のひとり当たり可処分移動時間は限られており、1回当たり移動時間をできるだけ少なくすれば移動距離は増えるので、そうした社会を作らなければならない。環境問題、安全問題など社会的なマイナス局面を解決するときにわれわれ自身が豊かになるような解決策を探さなければならないということである。また、「人材育成」とは、ただ豊かなだけではなく、引き締まった社会を作るため、若い人たちにチャレンジの場を提供できるようにすることが必要、ということである。


清水氏 幼い時、青信号で横断歩道を渡っている際、事故に遭遇したことがあるが、18歳になって自動車に乗るようになると母親から「気をつけるのよ」といわれたことがある。この母の言葉は「加害者にならないように」という母親の気持ちで、現在も自分にとっては安全をリマインドした言葉になり、安全問題は自分にとってリアリティをもって自然に意識することになった。
 環境問題については、大学(武蔵工大)のときに、水素エンジン自動車に初めて遭遇し、「これが将来の自動車」と思い、燃料電池に夢を感じて興味を持って取り組むようになった。昨年、NHKの「ようこそ先輩」という番組に先輩として出演し、車の楽しさを教えることにしていたが、事前調査では子供たちの40%近くが「車は嫌い」と回答していた。その理由は、毎日のようにディーゼル車の排出ガスにさらされていた上、

商店街でオートバイや自転車に接触し8割くらいの子供がミラーに当たったり擦り傷を負い、車は嫌いな存在になっていた。そのとき、「車を被告席に座らせてはならない」と感じ、「車を正しく使って、人と車が共生できる方法を考えなければ」との思いを強くした。

  柳下氏 椎名氏の基調講演では「持続可能性」がキーワードのひとつだったが、いろいろな制約がある中で、その実現は可能なのかという疑問もあるが。
 渡邉氏 われわれ自動車業界のエンジニアは、昭和53年の排出ガス規制(53年マル排)を体験しているが、そのとき、「そこまでやると車は走らなくなる、売れなくなる」という激しい議論もあった。しかし、各社が懸命の努力をした結果、日本車が最もクリーンで信頼性が高いということから、世界で大きな競争力を得た。要するに、マイナスの局面が新しい世界を切り開くということを体験している。ある意味では、トップダウン的な施策もいいのではないかということになる。
 燃料電池車にしても、アメリカの宇宙開発計画の中で、月に人類を送るための生命維持装置に関する技術として取り上げられ、69年にアポロ11号が月面着陸し、世界で初めて実用化された技術としてその後世界中から注目される技術となった。そういう意味では、これもトップダウンの思想に似たものであり、われわれが環境問題や安全問題に取り組む場合、こうした思想を受け入れることが必要ではないかと思っている。豊かになるために移動距離を延ばしながら環境負荷を小さくする、安全問題を解決するにはどういう技術が必要なのかということに真剣に取り組むべきではないかと思っている。

 清水氏 日本の国民はこれまで、苦しい中で強さを発揮してきたと思う。だから、現在の状況の中から必ず、何かが生まれるとポジティブに考えている。ただ、こうした流れの中でユーザーが取り残されないようにしたい。これまで、自分たちユーザーは何ができるのかを議論していなかったと思う。もう一点は、車を使っていない人たちの視点に立って考えていくこともポイントのひとつだと思う。

 柳下氏 市民一人ひとりあるいはドライバーの意思や欲求が車社会を作る。つまり、主役が原動力にならなければ絵に描いた餅になりかねない。
 清水氏 ユーザーとしてかなりできるのではないかと思う。やってみようと提案することも重要だ。

 渡邉氏 私も、車だけでこの環境問題を解決できるとは思っていない。車とインフラと人、それと燃料がポイントで、いろいろな対策を組み合わせて、難しい問題が解決できると思う。「燃費の大幅向上に向けた技術開発」、「環境負荷の小さい車の大量普及」、「車から公共交通へのモーダルシフト」、「できるだけ交通ニーズを発生させないまちづくりの推進」というすべてに取り組まなければだめだと思う。
 昨年、豊田市で、朝夕の通勤渋滞を緩和するためマイカーを2,000台減らすTDM実験では、マイカーから鉄道、バス、自転車、徒歩に転換する運動には7,800人が参加した。また、パーク・アンド・ライドによってピーク時45分かかっていた移動時間を35%低減することもできた。このように、交通のデマンドを変えることでかなりの効果があることが分かった。これでCO2換算では14%低減できたが、さらに、道路整備策として片側だけ2車線にすると17%低減できている。
 このように、移動手段とインフラ整備は誰かが考えなければならないが、これはトランスポーテーション全体で取り組むべき問題である。

 柳下氏 道路を整備しても車の量が増えて渋滞が激しくなり、抜本的に政策を変えざるを得なくなっている。まだ模索している段階ではあるが、交通政策は社会システムそのものを変えることになる。

 渡邉氏 豊田市の場合、朝8時から8時半頃のメーンストリートでの通行時間は意外に速くなっている。路地やわき道からの流入が少なくなっているためで、そうした路地での交通事故も減っていると思う。これをみてもすごい変化が可能だと実感している。

 清水氏 そういう情報こそ、次世代ナビでユーザーに伝えることができないのか。

 渡邉氏 これは大変重要なことだと思う。現在のVICSなどによる情報は混雑情報であり、目的地に最も早く行ける情報をもっと多くドライバーに伝えるべきだ。こうしたナビゲーションはやはりITSだと思う。

 柳下氏 ここまでの議論をもとに会場の方から感想を聞いてみたい。一般消費者、ドライバーの立場ではどうか。

 参加者(女性) 確かに人間にとって移動はもちろん必要であるが、いろいろな生活環境などがあり移動距離が多くなれば本当に豊かなのかについては疑問。ただ、動きたいときに動けないというのでは確かに豊かではない。

 渡邉氏 たとえば「IT化すれば紙がなくなる」といった一種の幻想があると思う。しかし、人間とはもっと多くの情報がほしい、好奇心を満たしたい、という欲求がある。子供を自由にしているといろいろなところに動いていく。これがすべてとはいわないまでも、いわゆるユビキタスの社会を作ることはあるひとつの豊かな方向のひとつだと思う。

 清水氏 男性と女性とでは考え方が異なる部分があるかもしれない。過日、「女性のための道づくりフォーラム」を聞いたが、女性団体は「自分たちの地域のことは自分たちが一番よく知っているので任せてほしい」という意識が強いと感じた。女性は、自分の家庭を守るという意識が強いのではないか。そのため、移動の範囲は小さい一方で密度は濃いと思う。

 参加者(男性) 途上国などでは、移動は仕事のためであり、休日に家族連れで公園に行くというケースはあるレベル以上でないと見られない。そういう意味では、日本がここまでに至っているということに非常に感激している。仕事のための移動と家族などとの楽しみのために移動するという豊かさがある。また、移動手段にも注目したい。長距離移動の場合は航空機や鉄道が中心だが、数十キロの場合は何で移動するかを考えなければならない。つまり、公共交通機関をどうすれば維持できるかを真剣に考えなければならない。自動車と公共交通機関の分担を考えないと、よりよい車社会は実現できないと思う。

 柳下氏 地域のことは地域で決めるという風潮がある中で、今話題のテーマについてはなかなか解決の糸口がみられない。どのような切り口が必要か。

 清水氏 未来的には、車は「動くボディスーツ」のような感じになっていくと思う。だから、公共交通のありようをダウンサイズするとともに、もう少しパーソナルなものにし、多様性を持たせて自動車を地域の状況に合わせて使えるようにするのが役割だと思う。公共交通についての考え方は近未来のスキームではなく、もっとその先を考え、斬新なアイデア、新しいコンセプトが必要ではないか。

 渡邉氏 やはり新しいトランスポーテーションの考え方が必要ではないか。自動車は、ドア・ツー・ドアのトランスポーテーションとして100年間続いてきたが、交通はいろいろなオプションの中から選ぶという多様性が出てくると思う。しかも、ドア・ツー・ドアの中で公共交通機関や車、そのほかの乗り物を乗り継ぐという、いわばシリーズとパラレルの両方があると思う。それぞれについてもっと情報が提供できるようにするとか、公共交通機関についてもさらにオンデマンドに細かく対応できるようにして車との結びつきをどのようにするのか、シリーズとパラレル双方についてこれからの技術で解決していかなければならないと思う。

 柳下氏 温暖化問題を念頭に問題提起してみたい。2012年までに京都議定書目標を達成しなければならないが、長期的にみるとそれは年々厳しさを増すことは間違いない。それだけに、車を使う側の人間が生きていく智恵を結集してビジョンやシナリオを作り、国として成功に導かなければならないと思う。しかし、これは国際的にみても大変な競争を課せられるわけで、果たして日本はその競争に勝ち残れるのかどうかということである。

 渡邉氏 日本の技術力は世界最先端の水準であり、資金的にも可能性はある。

 清水氏 ベンツが初めてガソリン自動車を作り、 20世紀にフォードによって量産化が進み一気に開花した。21世紀こそ、欧米で花開いた自動車を日本で最後に仕上げるというか、持続可能なビジョンを策定することだと思う。そこでは、行政も企業もユーザーもともに会話し、一緒になってビジョン作りに参画するということが一番重要だと思う。

 柳下氏 自動車は1億2,000万人の国民の大半がかかわっており、そうした国民が結集してユーザーを巻き込んで議論していかなければならないのではないかというのがひとつの答だと考えている。これがうまくいくことで、未来のくるま社会、あるいは持続可能な交通が形作られていくのではないか。これをいち早く達成したところが世界のリーダーとなって世界3極の競争の中で重要な地位を占めるという気がする。それを信じて、われわれは問題に取り組んでいきたいと強く訴えて、締めくくりとしたい。


 
 
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